日印ワーク・カルチャー比較

by Ashok Ashta


ご紹介ありがとうございます。
期待にこたえられるかどうかわかりませんが、私の目から見た日本、そしてインドの文化について話しの機会を頂いた事を光栄に思います。
ワークカルチャーについてと言われていますが、すなわち文化とは・・・文化について話すときに、念頭におかなくてはいけないのは、その話はいろいろなことを総合してお話するわけで、全てそうであるとはまず限りません。
皆さんも日本の各地、北は北海道から南は沖縄まで、からここインドへ来られているので、たとえ一言で「日本人」と言っても様々な方がいらっしゃると思います。
一口に「インドの事を・・・」と言っても大変大きな国で、今日は私が住んでいるここ北インドの人々に関して、お話させていただきたいと思います。
そして、今回のお話は私一人のインド人から見た、両国のカルチャーについての内容となります。

2 公私のギャップ
まず、このスライドにあるように、「家族サービス」と書いてありますが、それが仕事の始まりだと思います。
ここに仕事に対する文化の違いも見受けられます。
一般的に言えば、インドの場合は、その家族のためにみんな働くわけです。日本もそうかもしれませんが、ただ、私が日本にいたときは、言葉どおりで、誰か同僚に「今度の土・日、どうするの?」と聞くと、「土曜日はゴルフ、日曜日は家族サービス」そういうときに、この家族サービスという言葉は、家族のためにもなんかやってあげようと、これもひとつの責任になっているように私は受け取りました。
ある意味では、月曜日から金曜日までは会社のために、土曜日のゴルフは自分のために、そして日曜日は家族のために、自分が何かやらなくてはいけない、そんな風に自分の役割を決めている人が多いように思われます。
で、インドの場合は、そういう家族サービスという言葉は今のところ聞いたことはありません。インドの企業で働いた事はありませんが、なんとなく、周りを見ていると、働くのは家族のためだし、逆に、家族のためだったら、仕事はいつでも休めると思うわけです。うちに手伝いに来るような人も、急に休んだ理由を聞くと、親戚の誰かが病気になったとか、村で結婚式があったとか、そういう出発点が家族であると思うのです。
それと関連してみますが、日本では仕事とプライベートと家族でははっきりした区分が見られます。人間は1つですから、その中でうまくまとめてあるのでしょうが、区分が見られます。なぜかというと、インドのほうでは、例えば土・日の感覚、仕事も家族もプライベートも・・・1つも区分がないような共存の世界です。
例えば、これは皆さんも見たことがあると思いますが、よく名刺を渡す時に、その名刺にレジデンスの住所と電話番号が両方書いてある場合が結構あります。
土・日に仕事に関連して自宅に電話しても、それで怒る人はほとんどいない。
私が日本にいたときに仕事関係で土・日に電話がかかってくる事はほとんどなかったし、かかってくるとよほどのことがない限り、普通の人はまぁ、怒るでしょうね。
ですから、公私のギャップがある意味では日本の方ははっきりしているということでしょう。

3 全員参加による決定
それでは、次に職場に入ってみましょう。
仕事はいろいろ物の決定とその実践があって成り立つ。決定の仕方についても、私は差があると感じます。
日本の会社では、全員参加による決定というのが大事にされます。まず根回しをしておいて、会議の際に全員賛成で決定するといった形が多いと思います。
新人の頃の話を思い出しますと、あるセミナーの準備をしていました。どういうセミナーをやるかというのは課長、係長など先輩の方がよくわかっていて、ミーティングが夕方4時から8時、9時の場合もある。いろいろなものが決まっていくんだけれど、私はそのプロセスを見ているだけで、なぜ私がここにいなくてはいけないのか、終業時間の5時半に終わって帰ってはいけないのか、その当時はよく思いました。
私の存在は決まっていく事に全然貢献していないでしょうし、いなくてもいいと思ったのですが、あとで振り返ってみると、1つはものの決め方のOJTであったのでしょうが、もう1つは全員参加による決定であるということにもなるでしょう。
これともまた関連してみますが、日本では根回しと言うのがある。それも考えてみると、事前に周りの了解を得ることは皆を参加させたということにもなる。この全員参加というプロセスが日本では大事にされると思います。
逆にインドで考えてみると、そんなに決定に貢献できない方を参加させる事はまた直接関係のない方を参加させる事は意味がないと思われるのでしょうか。そういう全員参加という文化はあまりないと感じます。
ここで申し上げたいのは、インドでは全員参加のメリットを考えてそれを批判しているのではなく、まずそこまで気が回らない。必要性を感じない。逆にインドの場合は社会も平等社会ではないし、そういう貧困の差ありで育てられた皆が、会社生活の中でも平等という望みも期待もないわけです。だから、会社に入って、人と人の差があって、決定に参加する人決定に参加しない人、それぞれいるということにもなります。

4 平等社会
そこでここでは、その平等社会のところでワークカルチャーの違いが見られます。インドの場合は平等じゃないというところで、それぞれ、地位が違う、従って、会社での扱いにも差が激しく出ます。
従って、掃除する人は掃除する。現場の作業員は現場で作業する。マネジメントは望めない。マネジャークラスが違う。食べるところも違う。こういう考えがあってあたり前。日本では大体皆同じ食堂、ほとんどの会社では、同じ食堂で食べたり、マネージャーセクションがあったりしないと思います。
日本からインドに入ってくる会社でよく同じ食堂にしました。同じ制服にしました。という成功例が紹介されますが、本当にどこまでそれはインド人の気持ちの中で平等化をさせたのかというのが、私も興味深いところです。
自分でできることは自分でする。←日本人
人にやってもらえる事はやってもらう。←インド人
先日、あるセミナーに出席した時、パネリストたちが私たちと同じ位置まで下がってパワーポイント資料を見たいということになり、イスが必要になりました。インド人の主催者側はその会場のボーイにイスを持ってくるよう指示していました。そこに日本人の方がいらして、その方は主催者側ではなくて、招待された人だったんだけれどもその人が自分でイスを動かしていたんです。
皆さんも会社で何か仕事を頼む時に、その仕事がいろいろな人に回って行き、結局最後は誰がやるのかということになったり、確かに仕事はなされたけれどもすごく時間がかかったということがあるという経験をされた事があると思います。日本人は自分でできることは自分でする。でもインド人は小さい頃から役割分担が決まっていて、そういう生活習慣から、頼めること、または誰か他にする人がいるのだったらその人にやらせる、やってもらう事があたり前になっているのです。たぶんおうちでサーバントなどを扱っている皆さんの奥さんは初め苦労されたと思います。今でもかもしれませんが・・・

5 言葉の重要度
日本ではよく「1を聞いて10を知る」という言葉があり、1つの指示でもその言葉の奥に隠されたいろいろな事もやるのがあたり前とされています。でもインドでは指示どおり動く事以外は考えない。だから別に「1を聞いて10を知る」というのではなく、「10を言って8をする」で十分。つまり8をやってもらうために10言うということになるのです。
もう1つここで重要な事として、インドのワークカルチャーというかどうかわかりませんが、インドでは、仕事上英語が大事にされる。その英語力でよく相手を評価してしまう。英語が上手で説得力がありそうな内容がそうでなくても話の仕方であれば、それが評価される。ですから、ある意味で言うと、英語での話し上手というのが成功していくキーポイントだと感じます。
日本の場合は、話し上手も大事でしょうが、言語力だけで成功できるのか私はわかりませんが、皆さんはどうお感じでしょうか?

6 礼儀について
日本の場合は先ほどの根回しという言葉もありましたが、そのあとのお礼と言う事もあったりして、礼儀が大事なのですが、インドの場合は、政府関係は抜きにしたとしても根回しとかはなく、Thank youという言葉もなく、とにかく行動をおこすということが重要になってくるのです。
日本でホームステイファミリーと生活して私が思ったのですが、家族の中で何かとって欲しい時にじゃぁ「ジャムを取ってね」だとしたら、「ありがとう」「どうも」というのが結構ありました。自分の国、インドでは1日の中で「ありがとう」とか「どうも」とか「お願いします」という言葉はないなぁと思いました。というのはヒンディー語でも「ダンニャワード」というのがあるのだけれど、ほとんど聞かないし、使わない。
従って、皆さんから見れば、「お願いします」とかお礼の一言もないと感じる事も時々あると思いますが、原因はそこにあるのです。

7 時は金なり
次は時間に関しての話です。ごく一般的に、皆さんの中でも言われているでしょうが、日本の場合は時間に厳しい。インドの場合は時間にルーズと言われますが、ここで、1つそのインドの言い回しを理解してもらえたらと思います。というのは日本の場合は5分でできるというものは時計どおり、300秒ということですが、インドの場合は5分と言うのは言い方によっては「すぐ」という意味しかもちません。場合によっては「急ぎます。」という意味であったり、「できるだけ早くやる」という場合もあります。だから急ぐものはインドの場合も急ぐけれどもタイムフレイム時間の枠の中で考えているわけではないということです。だからよく日本人チームとインド人チームの間の話を見ているとこういう場面があります。
日本人サイドは「何時までできますか?」インド側は、「いや、できるだけ早くやります。」すると日本人側は「できるだけじゃなくて、何時まで?と聞いているんです。」するとインド人は「できるだけ早く!っていってるでしょ」日本人側「3時なら3時までといえよ!!」と怒りっぽくなって言うと、インド人側は「でも2時半までにできるかもしれませんよ。」という返事をしたりするのです。ここでタイムフレイムの中で物事を考える日本人とそうでないインド人の中でよくコンフリクト(衝突)が発生します。
で、まぁ漫才ではないですが、最後にインド人のトップが「この日本人のために2時までにやるといってやれよ」などとインド人部下に指示を出したりするんです。
さて、ではここで、同じ時間の関係で最後に言いますが、日本の文化の中で「忙しい」と言うのがいい事であると私が感じます。誰でも自分が忙しいと回りに思って欲しいと私には思えてなりません。例えば、定年退職2ヶ月前の窓際に座っている次長さん。仕事はもうほとんど回ってこない。朝から晩まで新聞を読むくらいの方でも、電話がかかってくると「俺は忙しいんだ!」というイメージを私は日本のテレビかなんかで受け取っています。本当に忙しいか忙しくないかはわかりませんが、たとえ同僚同士でもやはりお互い「忙しいね」といわなくてはいけない。暇であっても「忙しい」というのが重要です。だからこそ、電話する時でも誰かに話し掛けるときでもまず挨拶は「忙しい所すみませんが・・・」で始まるのです。
実際に今回のこの講演の依頼状にも「お忙しいところ真に恐縮ですが・・・」とありました。
インドの場合は外資系の企業で働いている人を別にして、I'm busy!というような人はあまり見かけません。私の推測ですが、たとえ忙しくてもI'm busy!と言えないから、新しく入ってくるものに対応してしまう。従って、先約があってもそれが後回しになってしまう。それが時間にルーズの原因の一つになっているかもしれません。
ヒンディー語で「忙しい所すみませんが・・・」というのはなかなか言葉としてすぐ浮かばないです。

8 最後に
そして、これは仕事に限った事ではないですが、まぁ皆さんもこちらでパーティーなどに出席される事も多いと思います。日本でしたら、7時からはじまるとあればその時間に間に合うように行くでしょうが、まずインドでは夜のパーティーでしたら8時からと招待状に書いてあることが多いと思います。そして、実際にパーティーへ行ってみると・・・なんと始まるのは10時ごろとなったりすることもあるのです。特に政府の偉い方などが呼ばれているときなどはその方がパーティーをはしごしている事もあったりするので、遅く始まる事も多いのです。
そしてこのパーティーに関しては付け加えて、先ほど話したように、仕事関係であっても家族が絡んできますから、日本とは違って、インドでは奥さん同伴ということが多いです。今日私は一人できましたが、本当は妻も一緒につれてこようかと思っていたところです。




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